二枚の戦争体験画「ああ、牡丹江よ!」は、平和祈念展示資料館に収蔵が決まりました。感謝いたします❗

 山本義一遺作展vol.3のあと、この秋から冬は忙しかった。
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 おかげさまで、展示翌日には二枚の戦争体験画「ああ、牡丹江よ!」は、赤帽さんの車で無事に調布にある修復工房に届いたとのしらせがあり、ほっとした。f:id:shimautaki:20200103153236j:plain
 誠にありがとうございます。f:id:shimautaki:20191231212054j:plain
 しかし、長い間、二宮の実家にいたので、この後の秋から冬はあっという間にすぎ、令和元年がもう終わろうとしている・・。
 10月は聖心女子大学のシスター鈴木秀子先生の「文学と人生」の授業に出た翌日に、竹富島の「たなどぅい」、種子取祭に行くことになっていたので、国際コミュニオン学会のわかちあい会には参加せずに帰宅した。
 それにしても、竹富島に着いてみれば、たなどぅいの頃の島んちゅの超過密スケジュールに対しては、ただのビジターとしてはなんだか申し訳ないような気持ちになる。
 到着した日の夕方には、各集落ごとに世持オンで舞台稽古を披露するので、その前に行きたいところがあった。
 まっさきに向かったのは、港すぐのところにある「ゆがふ館」。f:id:shimautaki:20200103150827j:plain
 スタッフの阿佐井拓さんの顔を見るまでは安心できない、と自転車を借りようにも、この日はいつもより早く貸し自転車屋さんがしまるというので、必死で借りる店をさがしたが、どこも締め切り。すったもんだのやりとりのあとパンクした民宿のチャリを借りて、引きずるようにしてこぎ、息を切らして日のあるうちにと向かう。f:id:shimautaki:20200101002731j:plain
 拓さんはいた。
 まっさきに顔を見に来た、と言うと、大丈夫ですよ、と瞳をキラキラさせて答える。
 多数の観光客が訪れるコンドイビーチに、RJエステートという沖縄本島の会社がリゾートホテル建設を計画したのである。
 島びとは石垣島から海底をとおって送られてくる水が繁忙期には足りなくなる恐れがあるし、環境保護の観点からの諸問題を理由に、島民総会でホテル建設反対を決めた。しかし、竹富町自体がなんと安易にも計画に許可を出していた、という非常事態である。f:id:shimautaki:20200101003405j:plain
 すでにホテル建設に反対する全国からの7万筆を超える署名は集まっているが、(12月、この署名を竹富島はホテル建設側に提出しようとしたが、受け取らなかった)こんどはなんとホテル建設側が「水不足にはならない、ネット上の「誹謗中傷」記事を削除するよう」求めて、島びと個人を訴えたのである。
(なんと、「美しいコンドイビーチにリゾートホテルを造らないでください」署名を求めるネットキャンペーンは、「Change.org.Japanの「声をあげれば社会は変えられると勇気をくれた署名キャンペーンで、プラネット賞を受賞という快挙となる)
 水は、年間の平均値の、あくまで数字上ではなんとか足りるかもしれない。しかし、ホテルが稼働する超繁忙期にはどれだけの水が必要かを数値化していないまま、行政が建設計画に許可を出した・・というのは、「たなどぅい」の後の「なーきよい」の祭祀を見るため、再び竹富島に来て島びとに話を聞くことができたから、知ったことである。
「わたしたちは水の大切さを身にしみて知っているから、子どもたちにも歯磨きの水は流しっぱなしにしないと教えているし、洗い物の水は捨てずに植物にあげたり、それは日々気をつけている。水が足りるというのなら、もうわたしたちは節水しなくていいんですか?いいんですね?と町に言いたい」
 と話す方もいた。
 たなどぅいの間は、あまりにみんなが忙しく、また行事に集中するなか、そういう話をするゆとりはなかった。 
 しかも、このたなどぅいのタイミングで、港から発着する船の便が、いままでは30分に1便でていたのが、なぜか1時間に1本に変更になっていたのである!
 わたしが石垣島の空港から港に着いてみれば、なんと桟橋に観光客がずらーっと並んで長い列をなしている。当然、一艘の船では乗りきれず、わたしの前で人数オーバーとなってしまう。「2艘出しますから」と船会社のスタッフがいうのには、驚いた。祭りの時季でなくとも観光客はあふれかえっているのに、なぜ1時間に1本にしなくてはならないのか。2艘の船を出すなら、もう乗船が終わる頃には30分以上はかかってしまう。それなら、30分に1本のままで良かった、同じことではないか、なぜ?
 炎天下、うりずんの頃から真夏に桟橋に溢れる観光客が熱中症になるのは、目に見えている。
 ちょうど、このころ入島料の徴収が始まっており、竹富島のターミナル「かりゆし館」に自動販売機が設置され、ポスターを見た観光客が販売機で300円を払って、自己申告によって入島料を払うという仕組みになっていた。(なーきよいのときには、石垣島の港の待合室に旗と販売機が設置されていた)
 世界的に、多すぎる観光客から地域の環境を守り維持するためにビジターに課金する入島料というシステムは今や定着しつつあり、日本の離島では竹富島がはじめての導入になる。f:id:shimautaki:20200101114543j:plain
 しかし、このことについて知っているわたしですら、いったい島のどこで払うのかわからなかったし、多くの観光客がポスターをみながら、販売機を前にしてすら「観光ツアーにふくまれているんだろう、いや船代にもう入っているはずだ」と言い合っているのである。
 確かに石垣港で竹富島行きのチケットを買うのだから、自動的に船代に含まれるのがもっとも簡便な、もれなく徴収できる方法のはず。
 この入島料を船代に含めることができなかったことと、船便が30分に1本から1時間に1本に減らされてしまったことには、どうやらなにか関係があるらしいが、これはわたしのようなビジターにしてみればあくまで噂と憶測に過ぎず、確たる証言を得たわけではないのだから、今は断定はしないでおく。f:id:shimautaki:20200103151208j:plain
(12月21日には、竹富島の島びとたちがRJエステートを反訴した)
 そんな複雑な時に、変わらず、まさに「うつぐみ」精神で島びとが一致団結してたなどぅいを行うというのは、大変な精神的、肉体的なエネルギーを要するにちがいない・・。
 さて、拓さんの顔を見たあと、夕日が沈む前にたどり着いたのは、カイジ浜の蔵元跡。
 もう観光客も引き揚げてひとけのない道路、神の道とされる道の真ん中に白い小さな子猫がいた。f:id:shimautaki:20191231212950j:plain
  思わず「ミーちゃん」と母親の猫の名前を呼ぶと、くるりと振り向き「にゃー」と返事をする。絶妙のタイミングで写真を撮る。
 子猫は、目が見えないのか、向こうから星のやのバスが来るのに退こうとしない。道端から呼んでも動かず、しかたなく近づいて片手で抱いて道の端に移動するのを、バスの運転スタッフと客がじっと見て待っていた。
 モデル料に、と荷物をさがすと、石垣島のカメラマンのお子さまへのおみやげにもってきたハロウィーン仕様のちょっと変わった野菜ふりかけが。小分けになったおかかふりかけを差し出しても見えないのか、食べようとはしない。猫の近くにばらまいてもカラスは寄ってはこなかった。カラスの嘴では、振りかけは無理なのか、カラスと仲良しなのか、カラスに見守られるように食べている不思議な子猫だった。
 ひそかに西塘のおつかいかと想像をふくらませかけたとき、「たなどぅいの説明会をうつぐみ館で行います」の放送が。
 ヒィヒィいいながら、パンクした自転車を強引にこいで、遅刻しつつも説明会に参加できたのだった。
 そして翌日、芸能奉納の初日、天気予報は微妙だった・・。
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(続く)