島ハーブと八重山料理の店『潭亭(たんてい)』の魅力

 先日、沖縄から島野菜が届いた。送ってくれたのは首里八重山料理の店『潭亭』を切り盛りしている宮城礼子さん。

 箱の中には、ゴーヤー特大2本、ウイチョーバー(ういきょう)、フーチバー(よもぎ)、ニガナ(苦菜)、チョーミーグサ(長命草)、ハンダマー(水前寺菜)、島らっきょうなどの島野菜たち。
 本土の野菜に比べるとくせの強い個性的な野菜たちを、わたしは島ハーブと呼んでとても愛おしく思っている。
 とりわけその香りが好きなのは、イーチョーバー。
 これはスィートフェンネルとして西洋料理ではお馴染みのハーブだが、沖縄のものはフサフサとした葉が柔らかく、より甘くさわやかな香りがする。この香りそのものを味わうのにぴったりの料理法が、カタハランブー。
 片腹がぶ〜っと膨れた、という意味で、布袋様のお腹のようにぷっくり膨らんだ、しずく型の天ぷらだ。沖縄の天ぷらはフリッターに近く、カタハランブーはお菓子のような感じが楽しい。
 作り方には、少々コツがいる。タネを鍋肌にすべらせるように流し込んで揚げるのだ。揚げたてをいただくと、びっくり。ぷっくり膨らんだところに歯を立てると、ふわ〜っと鼻腔から抜ける甘〜い香りにうっとり。キツネ色になった耳の部分はパリっとこうばしく、一品で二度おいしい料理である。 
 紫色がなんとも美しいハンダマーも大好物。 金沢や九州では水前寺菜と呼ぶ地場野菜だ。
 さっと炒めるとぬめりと紫色の汁が染み出て、お皿の上に見とれるほどきれいな色の輪ができる。汁物に使おうとして加熱しすぎると黒く変色するので、仕上げに加えるのがお勧めだ。
 ニガナはその名の通り苦く薬効があり、魚汁や山羊汁のくせを消すのに用いられる。沖縄でポピュラーな白和えにすると食べやすくおいしい。
 そして、ゴーヤーに次ぐスターと思えるのがチョーミーグサ(長命草)。
 生命力が強く、ニガナとともに、岩場や海岸など土のないところに自生するハーブだ。薬効を生かし、お茶や化粧品も登場している。最近は資生堂が開発した栄養補助食品も出ているので知っている人も多いだろう。
 生の葉は、細かく切って刺身のツマや県魚グルクンの南蛮漬けの付け合せにすると、独特の香りに夢中になる。オリーブ油やバルサミコ酢と相性がいいので、サラダにするとおしゃれで、抜群においしい。
 色濃い島野菜、島ハーブにはビタミン、ミネラル、ファイトケミカルと呼ばれる微量栄養素が豊富に含まれている。できれば、生でいただくと栄養素をまるごととることができる。礼子さんは島ハーブのくせを生かして、和え物もお客様に出す直前に刻んでいる、と言っていた。それもまた、ビタミンなどの栄養価や香り成分を最大限に生かすための工夫だろう。
 そうそう、竹富島の民宿のキッチンで長命草をスムージーにしてみたら、便秘の人たちが驚くほどの効果を発揮したことも受け加えておきたい。
 『潭亭』の島ハーブ料理で、心までやさしく癒されたいと思えてきた。
 そうだ、またオキナワに行こう!