沖縄、ぬちぐすいしました。が、目取真さん勾留ニュースに仰天!

 3月末に沖縄本島に行ってきた。
 春とはいえ、沖縄では旧暦の2月。曇天で雨模様の日が続いていたらしく、風が吹くと肌寒かったり(ニンガチカジマーイ、二月の風廻り)、夜間は冷え込んだり、意外や気温が安定しない季節。沖縄のホテルによっては暖房機能がないことがあり、寝具を追加で借りて対応するしか方法はない。
2月に琉大で集中講義をした友人は、寒くてすっかり体調がくるってしまったみたいだった。わたしもそれを聞いていたので、薄手のユニクロのダウンを持参したのだが、これが昼夜を問わず活躍したことを告白しよう。
 しかし、南城市取材はありがたいことに晴れ上がり、春のちょっともやっとした青空の下、浜あしびと島ハーブを満喫した。
 去年、南城市に民泊に来ていた柏南高校の女子生徒たちと行った、ヤハラヅカサ。


 琉球の祖先神アマミキヨ沖縄本島に上陸した聖域で、海のなかに1メートルほどの岩が屹立している。おそらく久高島からやってきたアマミキヨが船をもやった岩ではないだろうか。その前の浜には、浜川御嶽がある。
 今回は、折しも干潮とあってイノーが姿を現し、岩のあちこちには、若緑いろの春のアーサが岩にへばりついている。夕暮れ近く、太陽が西に傾き、光線が朱金色を帯びて根元まで姿を現したヤハラヅカサを照らし出す。
 と、海にはヤハラヅカサの影が!
 逆さ富士ならぬ、逆さヤハラヅカサであった。
 天と地に屹立するヤハラヅカサは、茜黄金色に輝き、干潮の海はひたひたと音をたてている。ときおり背後の杜からうぐいすの声が聞こえてくる。それらの音以外になにも聞こえない浜は、しかし、豊かな音楽が鳴り響いているかのようだった。
 そのとき、ヤハラヅカサの横の海面から小さな魚たちの群れがジャンプして、白銀色に輝きながら孤を描いて、また海に潜った。小さなホワイトレインボーのように。
 ポシャッ。
 それは一瞬のことだった。
 そのあといくら目をこらして待っても、もう二度と魚の群舞はみられなかった。
 あれ、あれはなんだったの!?幻影と幻聴だったのか?
 浜は、沖縄ではこの世とあの世の境界とされている。
 魚たちはきっと神々の使いで、わたしたちに天上の世界の、静かで豊かな、うるわしく平和な時空を体感させてくれたのだろう。天と地、陰と陽、相反するものですら、そこでは美しく調和し、融合して満ち足りた時空。
 一瞬でありながら、それは永遠のような幸せな時間であった。
 こんなヤハラヅカサは、はじめて。思わずそうつぶやくと、昨年に続き今回も案内してくれた、ハーブ香房「花ふう」の金城豊さんが、
「自分もはじめて見た」
 と言ったのだ。
 よかった。わたしたちはきっと歓迎されているのだろう。
 この映像を思い出せば、ここにいつでも帰っていける、そんな気がした。
 そう、今回も南城市にやってきたのは、金城さんのところに民泊してハーブ体験をするためである。
 ティーツリーの枝を切って、精製機にかけエッセンシャルウオーターを抽出したり、完全無農薬栽培のハーブ園にやってくるミツバチたちのみつろうをとかして練膏を作ったり、好きなエッセンシャルオイルを入れたせっけんをつくったり、子ども時代の春休みの実験のような楽しい体験を満喫した。
 前日に民謡コンクールで新人賞と優秀賞をとったお孫さんたちと金城さんの唄三線を聞いて、豊さんの妻正枝さん手作りのあちこーこー(アツアツ)サーターアンダギーをいただき、中身のお汁や煮つけ、もずくなど家庭料理を満喫。翌日はアマミキヨが築いたとされる玉城城址、セーファー御嶽にも足をのばした。
 夜は、首里八重山料理『潭亭』の上品な料理を味わう。
 昼間行った首里城の夜景を目の前にしながら、宮城礼子さんのお出しをていねいにとって島ハーブをふんだんに使った料理をしみじみあじわうと、ほろほろっとこころがほどけていく。ちょっと冷え込んでくる春の宵には、ジーマミ汁やイカ墨汁が似合う。じんわりとからだをあたためてくれ、こころに滋養を与えてくれる。
 いつもながら、心身共にデトックス効果がある料理に「ぬちぐすいしました」。
 そして、帰ってきた翌日、ニュースで目取真俊さんの米軍による勾留のことを知る。
 目取真さんが辺野古新基地反対の人々と一緒に動いているのは、辺野古在住の浦島悦子さんから聞いていたのだが、なぜ彼一人が?と仰天した。『海鳴りの島から』というタイトルの目取真さんのホームページブログを読んで、無事であることを知ってほっとしたが、なんとも釈然としないものが残る・・。工事休止ちゅうのいま、なぜカヌー隊の、それも目取真さんひとりを勾留したのか・・。
 4月23日には早稲田大学での集会で浦島さんが講演するというので、東京に来た折にいろいろ話を聞いてみたいと思ってはいる。
 そうそう、ページをあらためてまた紹介したいと思うが、八重山の祈りの写真を撮り続けている石垣島在住の大森一也さんの写真展が東京で開かれるという。

 大森さんの写真集『来夏世』−−祈りの島々 八重山 (南山舎)との出会いは、7年のうつ病のブランクのあと、竹富島種子取祭にいったおり、同行のカメラマンが入手していたものを見せてもらったことだった。
 徹夜のユークイでうたたねしていたわたしが、思わずおきあがり、全頁をくいいるようにあくことなくみつめた写真集。翌年の種子取祭では、ゆがふ館で写真展が開かれていたものだった。作品展がいまから待ち遠しい。
 お知らせには、竹富島のニーラン石にニンガイする司たちの祈りの写真『ユーンカイ』が使われている。奇しくもヤハラヅカサと重なる映像なのだった。

  『祈りの島々 八重山』大森一也作品展
   2016年4月26日(火)〜5月29日(日)
   JCIIフォトサロン
   10時〜17時