山本義一遺作展vol.2、東京大学二宮果樹園跡地の写生会と展示が開催されます。

 早いもので、11月5日は亡き父、山本義一の三回忌にあたる。
 なんとも不思議な成り行きなのだが、JTBパブリッシングの月刊誌『ノジュール』7月号「元気になろう日本」のコーナーで沖縄県南城市の記事を書き、9月号では父親が多くの絵を遺している二宮町をとりあげた。

 その記事の中でも紹介しているのだが、山本義一は東京大学二宮果樹園跡地の学生宿舎の絵を描いている。

 東大二宮果樹園跡地は、元園田吉男男爵の別荘と果樹園である。

 大正15年に東京帝国大学がみかん栽培のための果樹園を開設したもので、広大な敷地内に、大正時代・昭和時代の魅力的な建造物が豊かな自然のなかに点在している。
 父の描いた学生宿舎は、ピンク色の色あせた建物のたたずまいがなんともいえない雰囲気をかもしだしている。現在、この宿舎と正門の絵2点は、二宮町役場の真向かいにある町民センター3階に展示されている。

 平成24年二宮町が約3万7千メートルの広大な敷地を購入し、その活用法を検討中だという。先だってシニアカーで通りがかったら、「一色イーグルス」という看板があり、一部がグラウンドに整備されており、子どもたちがグラウンドで野球の練習をしていた。そこではじめて、伊藤正明さんが町から借り受けて整備管理しているのだと知った。ちょうど来ていた「二宮子ども自然塾」の三宅栄子さんは、こどもたちが安心して遊べるようにと、自然と触れ合うあそびのイベントを催しているという。
 町がどのようにこの魅力的な空間を活用していくか、それは今後の課題だろう。しかし、すでに町の方々が夢に向かって行動を起こしているということを知って、実に頼もしく思えたものだった。

 さっそく、情報誌『しお風』を発行している神保智子さんに二宮町の魅力を紹介してもらうという趣向で、ノジュール9月号の「元気になろう日本」、『湘南二宮の歴史物語(ローカルストーリー)を発掘し、世代を超えた触れあいの場に』2ページの記事になった。今回は、写真も文も担当したので、入稿時が実に大変だったことを告白しておこう。その座業のために頸椎症になったといっても過言ではない。
 記事の中には、以前みかん山のまんなかで携帯をなくして困っていた時に出会った方も登場する。そのとき畑にいた宮原隆志さんが、ご自分のスマホを貸してくださったおかげで、私は自分の携帯に電話をかけることができた。すると、偶然にも携帯をひろってくださった親切な女性がおりしもいま派出所にとどけたところであり、グッドタイミングでわたしは携帯を手にとりもどすことができたのである。
 宮原隆志さんは中村隆一さんと一緒に、みかん山で炭素循環農法をてがけており、「たんじゅん野菜」というブランド名で安心かつおいしい野菜を栽培している。

 取材したときにいただいた空豆は、生でもやわらかくおいしかった。細胞がはちきれそうな玉ねぎは、スライスしても目にしみる硫化アリルがなく、辛みがなく甘く、実に食べやすかった。
 この炭素循環農法の野菜は、『ブーランジェリー ヤマシタ』のオープンしたばかりの食堂のランチでいただくことができる。訪れた日はかぼちゃのポタージュとパンがおいしかった。駅から東大果樹園跡地に行く途中、さんぽがてらに旧道沿いの一角に休憩できる場ができてほんとうにうれしい。いつも遠方からパンを買う人でにぎわっており、早めにいかないと売り切れてしまうほどだ。

 取材のおかげで、この果樹園跡地のすばらしさをあらためて知ることができた。
 敷地の裏側にあたる間島さんの敷地内には、鶴巻田横穴墓群の看板があり、なんと古墳時代にはこのあたりの斜面に横穴を掘って、墓が造られていたのだ。


 ここはいまワインの貯蔵庫に利用されているが、穴の中の壁面には貝殻が埋まっており、古層がかいまみえる、なんとも魅力的な磁場になっている。この墓群のあるあたりから果樹園跡地は、いにしえの人が特別な場所として選んできた磁場、パワースポットといってもいいだろう。

 おりしも建物を調査中の東海大学建築学科の山崎俊裕先生、伊藤喜彦先生にお話をうかがうことができた。
 伊藤先生の「日本の農業の近代化を担った記憶が今も建物に残っている、このまま朽ちるのを手をこまねいているのではなく、草刈りなどの最低限のメンテナンスをしていけば、町民のよりどころに、誇りになると思いますね」ということばは、実に力強く頼もしく思えたものだった。


 さて、前置きが長くなったが、この秋、東京大学果樹園跡地の2点の絵を含む未公開の山本義一の風絵画と、120号の戦争体験画『噫、牡丹江よ!』をラディアン 二宮町生涯学習センターで展示する運びとなった。

 チラシの画像はホームページの「INFORMATION 山本義一の絵画展のお知らせ』ページをご覧くだされば幸いです。

 ●山本義一遺作展vol.2 『戦争体験画と湘南の風景画――闇と光』展
 ●日程 10月4日(火)〜7日(金)
 ●時間 10時〜20時 4日13時から、7日17時まで
 ●場所 ラディアン(二宮町生涯学習センター)
      神奈川県中郡二宮町二宮1240-10
      ℡ 0463(72)6911


 また、10月8日に東京大学二宮果樹園跡地にて写生会を行い、山本義一の絵2点を展示し、写生会に参加してくださった方々の作品とあわせて、二宮町ふたみ記念館にて展示する予定だ。

●山本義一遺作展&未来に伝えたい風景」展
●日程 10月9日(日)〜16日(日)
●時間 10時〜16時
●場所 二宮町ふたみ記念館展示ギャラリー

神奈川県中郡二宮町山西1953−1
℡ 0463(70)3210