「わたしって、フラーなんです」の覚悟
声楽家で、二宮町議の一石洋子さんとランチをしているときに、いいことばを教えてもらった。
「病は市に出せ」
日本一自殺者の少ない町、徳島県の海部町でいわれている言葉だという。
沖縄、八重山は白保でも似たようないい方がある。
こちらは、2005年に出した『島唄の奇跡』に登場する主人公の恋人に教えてもらったもので、
「フラーになったら(こころを病んだら)、辻に立て」
こころとからだの病は、市に、辻に、外に出せ、というのである。
おもえば、2005年に「島唄の奇跡 白百合が奏でる恋物語」(講談社)を出版した翌年から、ほぼ7年のあいだうつ病になって引きこもっていたわたしが、このようにホームページ『シマウタキ』をたちあげ、島唄の奇跡日記というブログをはじめるようになっている。
いま、ネットワークという市に、辻に立っている。
そしてまた仕事を再開して、この世に、社会に立っている。
11月に細川貂々さん一家とともに二度目の沖縄取材旅行をしたときに、ツレの望月さんと「うつが治った自分」について、ちょっと話す機会があった。
あのときのことを、うつだったときを忘れている自分がいる。
わたしもまた、そうである。
気が付くと、うつであったことを、つい忘れている。
でも、それでいいではないか。忘れているけれど、わすれない。
あんなわたしでも、こんなによくなっている。
あれほどのうつだったわたしが、いまこうして話している。
それを、もしいまうつ状態にある人がいるのなら、知ってほしいと思う。
わたしだって、こんなによくなった。
きっと、あなたもよくなるよ、と。
市に出せば、きっと変わる。
病を隠したり、病む人を閉じ込めたり、隔離したり、引き離したり、隠ぺいするより、表に出よう、表に出そう、出ていこう。
辻に立てば、誰かが話しかけてくれる。
わたしの手にはなにもない。
でも、空っぽのようでいて、うつ病という体験を実はもっている。
それを見せるのだ。
それをわかってもらうのだ。
すると、その体験を情報として必要とする人が必ずいる。
それを手渡せば、その人からきっとまた、なにかをもらえるのだ。
必要な人に必要なものがわたり、代わりになにかをいただく。
そう、市の原点、物々交換である。
病は市に出せ。辻に立て。
すると、きっとなにかをいただける。役に立つ。
病のフラー辻説法は、きっと誰かの、そう、このわたし自身の役にたったのである。
だから、忘れない。
これは、大切なわたしの宝もの。
「わたしって、フラーなんです」